ストレスと自然治癒力
「なぜ同じような歩き方なのに、痛みの出る人と出ない人がいるのだろうか?」
これは僕が理学療法士になって1年目〜2年目の時によく思っていた疑問であった。
当時はバイオメカニクスが大好きで、姿勢分析や動作分析などからメカニカルストレスを捉え、運動連鎖を駆使してメカニカルストレスを軽減させる。そういった思考の枠に患者さんを当てはめながら臨床をしていた。
しかし高齢者で膝のスラストが顕著に出現している方でも痛みを訴えない方がいたり、若くてスラストなども大して出現していないように見えても、膝の内反ストレステストでは痛みを訴える人など・・「バイオメカニクス」という色眼鏡で見れば説明はつきそうな人ばかりだけれど、どうも納得がいかないことばかりであった。
そんな疑問を胸に抱いていた中で、僕はオステオパシーの哲学に出会った。
きっかけは患者さんを触れている時に感じた「なんかこの患者さんの硬さって自律神経由来な気がする」という、根拠のない直感からであった。
自律神経をアプローチすることはできるのか?いろいろ調べていて、オステオパシーの概念を知った。
そうしたことがきっかけでオステオパシーの研鑽にのめり込み、また少しずつ様々な代替医療なども学ぶようになった。多くの概念を知っていくと、「バイオメカニクス」というのは数あるストレスの中の一要因に過ぎないのだという考えに至った。
人はこの世界で常にストレスにさらされている。
その一部を簡単にまとめたのが、上記の画像なのだけど・・・
メカニカルストレスというのは、要するに重力環境下によって生じるストレスのこと。そのメカニカルストレスという観点を大切にしているのが、僕ら理学療法士の視点なのかなと考えている。
他にもストレスといえば、精神心理的なストレスや化学的なストレス、さらには地球環境もストレスになる。
人間はこう言ったストレスを常に受け続けている。生きるということは、ストレスに曝されるということである。
しかし、ストレスを受けても全ての人が病むわけではない。
人には自然治癒力というものがあり、ストレスを受けても良くなろうという自己調整機構が働いているのである。
この「お風呂理論」はつまり、ストレスという水が浴槽というその人のキャパシティから溢れ出た時に人は症状を発症するというモデルである。
浴槽には常に自然治癒力という排水溝があり、溜まった水を排出している。
しかし何らかの原因で排水溝が詰まってしまったり、また浴槽にたまる水の勢いが増してしまえば、時間とともに浴槽から水が溢れ出すことになるだろう。
このように、ストレスと自然治癒力との関係で人は症状を発症したり、またしなかったりするのではないか?ここまで単純ではないだろうけど、モデル化するとしたらこれが現時点での僕の考えである。
ということで臨床で患者さんの症状を考える時は、この2つの視点から考えると整理しやすいと思っている。
ストレスという視点と、自然治癒力という視点。
ストレスは、それこそ私たちの臨床現場では「メカニカルストレス」をしっかり捉えられれば、対応できるケースも非常に多い。
そして自然治癒力。これには自律神経や血液循環といった視点が重要になり、なかなか理学療法士には馴染みの薄い話かもしれない。
オステオパシーでは自然治癒力を引き出すというのが大きな目的になるため、このような考え方はベーシックである。
僕は外来整形外科という場所で臨床をしている。もちろん全ての患者さんを良くできるわけではないけれど、これらの考え方に基づくことで対応できる患者さんの幅は広がることだと思います。
運動器疾患を見るセラピストは、バイオメカの視点と、そして自然治癒力についても考えるようにしてみてください◎
そして、12月にこのへんの話をセミナーでお伝えさせていただこうと思います。
12月6日(木)19:00〜21:00
「姿勢の捉え方と運動連鎖」
体に加わる「メカニカルストレス」の捉え方を基本から学んでいきます。
そして12月16日(日)10:00〜16:00
「自律神経と自己治癒力」
「治っていく身体」を取り戻すためのポイントを解剖生理学から学んでいきます。
かなり内容盛りだくさんなので時間内に終わるか分かりませんが、こうした考え方を持ち帰っていただくこと。そして実技としてしっかり患者さんに作用できるアプローチを持ち帰っていただければと思っています。