ささやんブログ

"いま"を醸していく

理論を当てはめない

先日のサッカー中継で、「サッカーは偶然性の大きいスポーツか?それとも全てに根拠があるのか?」というアナウンサーの問いに対して、元日本代表監督の岡ちゃんがこのように答えた。
 
複雑系ですね。ルールはシンプルでも不定数nが沢山ある方程式、要素を分解しても因果関係がハッキリしないし、パーツを直しても全体のバランスが崩れる。」
 
まぁ僕は寝ていたので聞いていないのだけど!
 
 

 
 
スポーツは本当に複雑系であると感じる。
例えば堀内巨人史上最強打線。一番から八番まで全員がホームランを打てるバッターが並び、相手バッテリーとしては常に気を抜くことができない。この年のチーム本塁打数は歴代トップ259本というまさに史上最強打線である。
 
そしてその豪華なラインナップが功を奏し、この年のジャイアンツの成績は3位、翌年はなんと5位という結果であった。
 
 
チームスポーツにおいて、優れた能力を持つ個を集めたところでそれが最強のチームになるとは限らない。そこには様々な他の要素が加わるからである。チーム全体を「人」という枠で切り取って分解することはできても、「人」という要素を単純に足し算したところでチーム全体にはならないのである。
 
 
その「個」にフォーカスしても同様のことが言える。筋トレ至上主義によって部活などではどの運動部の選手も同じような筋トレメニューをこなしたりしているわけだけど、全ての筋肉量を増やしたところで、それが優れたパフォーマンスに繋がるわけではない。
 
 
 
僕は要素還元主義の考え方が嫌いだ。いや、厳密に言えばその理論が当てはまるものに対しては良いのだけど、明らかに当てはまらないものにも無理に当てはめようとすることが嫌いなのである。
 
ではどういったものに当てはまり、どういったものには当てはまらないのだろうか?
 
それが岡ちゃんの言っていた「複雑系」であり「不定数n」が絡めば絡むほどに当てはまらなくなるのだろう。
 

 

不定数nだらけの自然界

 
僕は理学療法士として、日々患者さんの身体の状態を診させていただいている。
 
学生時代は単純な要素還元主義の考え方に基づいた教科書で、病態や運動療法などを学んだように記憶している。
 
 
オスグッドになるのは大腿直筋が硬いから。なので治療は大腿直筋のストレッチ。
 
変形性膝関節症になるのは膝の筋力が弱いから。なので大腿四頭筋を強化しましょう。
 
 
国家試験ではこれが正解。そういうものだと学んでいるのだから、何も疑問を持たずにそうだと思い込んでいた。
 
しかし実習でのバイザーとの出会いや、社会人になり患者さんを担当するようになって、すぐに違和感を覚えた。
 
「国家試験では正解なはずなのに、患者さん全然良くならないやん!」
 
 
それは当たり前である。大腿直筋が硬いのも、大腿四頭筋が硬いのも結果的なものであるし、その原因となっている要素は複雑に存在しているのだから。
 
 
例えば大腿四頭筋の筋力が弱いのが本当に膝の痛みの原因だとする。
 
では大腿四頭筋の筋力が弱いのは何故か?
 
 
 
ある人は運動不足だからだと言い、ある人は姿勢が悪いからだと言う。
 
またある人は大腸が悪いからだと言い、またある人は経絡の問題だと言う。
 
またまたある人は栄養不足が問題だと言い、またある人は自律神経が問題だと言う。
 
 
 
みんな自分の好みでアレコレ言ってないで、ちゃんと評価してからもの言えよ!!
 
って本気で思う。
これギャグみたいな話だけど、あるあるですよね。
 
 
人間の身体は複雑系だ。
運動不足でも筋力が強い人もいるし、姿勢が悪くても筋力が強い人もいる。
 
運動量と筋力との間に関係性が見出されていたとしても、運動不足だから筋力が弱いとは限らない。
 
単純に一つの理論を持ち出しても、それがそのまま綺麗に当てはまるなんてことはない。
 
なぜなら不定数nだらけの存在であるから。